【R-18G】ヴァイオレット・ボックス



─よう。

今年もシャカフテポルノの時間だ。
 
 
【シャカフテ】 …シヤカフテ社会不適合者の略。多数派が比較的容易に遂行しているルールに苦痛を感じ、コミュニティへの一定以上の介入に障壁を感じる人。
 
【シャカフテポルノ】 …シヤカフテポルノ
シャカフテが、己が持つシャカフテ特有の劣等感や無力感に起因する失敗のエピソードを披露し、自らのイケていない人物像を晒して笑いを誘い、感動ポルノのように受け手の満足感に甘んじる行為。もしくは受け手がシャカフテをかわいそうな人と捉えた前提で、優越感に基づいて消費すること。
 
 
諸君、私である。
 
単刀直入に書くと、男かオカマしか入れないハプニングバーで女装をした話である。
引き返せ。
 
 

 
 

動機

なぜそんな場所に立ち入ったかといえば簡単な話だ。
 
 
2023年、私はもはや犯罪を犯さなければ女性とのねんごろが望めぬと言っても過言ではない状況にあった。
 
まず、金の無い身に風俗なる選択肢はかなり厳しいものがある。
月収3000円。これは障害手当によるものだ。減ることは無いが、増やすこともかなわない。はや3年程、生活費は全て親のすねをかじりながらこの収入で年に1~2本ゲームやPC延命用のメモリやストレージを購入して、なんとかネット上への発信活動が可能になる、最低限文化的な生活を確保している。
 
カネが欲しいなら働けばええやん!そう思うだろう。私だって働きたい。Twitterで突っ込まれるのは心外なので念のため書いておくが、就活はしている。就活と一言で言っても、会社を受けることではない。
私はそもそも心身ともに働ける準備が出来たことが一度も無いので現在「チー牛」で有名な、某精神に障害を持つ人向けの就活センターにお世話になっている。施設には書類の添削や面接練習だけでなく、就活スケジュールどころか体調管理まで手伝わせている。
しかしながら、サービス規約には全国的に「勝手に働いてはならない」「勝手に就活をしてはならない」「働いた場合は働けるとみなし解約する」との規約がある。収入源も調査されるので、日雇いですらこっそり働けない。またいくら訓練に参加しても一切賃金が発生しない。市町村からその手当も出ない。
30歳が秒読みになった今でも、金銭的には高校1年生ができる自己実現すら難しい状態にある。
 
そんなわけで、狂いそうだった。
解決可能な問題は年単位でしか解決できない可能性が高く、我慢がならなかった。一刻も早く目先の自己実現をしなければおかしくなりそうだった。
働けたとして正社員になることも現実的ではなく、週20時間働けるかわからない体調と支援機関での毎日。いつか就職しても、おそらく月収一桁。オンラインゲーム内での人間関係。最近甥が生まれてからというもの、親戚が休日に頻繁に実家へ遊びにきては幸福で充実した人生を押し付けてくる、逃げ場のない生活。その他諸々。
そんななか、私が夢見ていた自己実現とはどのようなことかというと───
 
 
───かわいいって言われたかった。
自分をかわいいと言ってくれる人は、みんな居なくなってしまった。
自分はもう、かわいくなくなったのだろうか。もう何年も言われていない。
 
────ていうかかわいい女の子と逢瀬になるより自分が可愛くなった方が早くね?
 
かわいいと言ってもらえるなら、もうどうでもよかった。
女に合わせる顔もない。じゃあ女装男としてならいけるだろ。
女装したら痴漢されたい!カマレズセックスしたい!もしかして今躁状態なのかもしれない。
とにかく、私は男に逃げたのだ。
 
 

 
 

準備

皆さんご存じ、ハプニングバーなるものは「遊びたくば3万は持っていけ」と先人の知恵がある。
男の方が高い入場料、初手その場にいる人たちに奢って内申点を稼ぐ用、女の子に恩を売る用。トラブル回避用。
職歴無し収入無し貯蓄なし童貞無職が到底行けるような場所ではない。
ではなぜ私がかのヴァイオレット・ボックスに入ることが出来たのかというと、その店は実のところ、この度も冠することとなった""ボックス""の体をなしているからである。
 
ビデオボックスについて詳しくはこちらを参照頂きたい。
一部屋目

二部屋目

好きなDVDや漫画を借りて数時間個室を借り、そこでオナニーをすることができる。自販機には大人のおもちゃが売っている。男たちはその人口のユートピアで性欲を育て、放ち、そして朽ちてゆく。それがビデオボックス。
今回潜入してきたのはそこにハプバーが隣接しており、ボックスのいち区画になっているというあやしい場所である。
ボックスとハプバー。場所自体は少し分かれているので、似て非なる二つの場所を利用「することができる」のだ。しなくともよい。ならば俺は、手札からフィールド上に無職童貞職歴無し精神異常オカマ限界カマキリおじさんを一体、女装させた状態で特殊召喚しようではないか。
 
野郎かオカマしか入ることが許されないこのハプバーは一年以上前から知っていた。いつか行こうと思っていたのだ。男たるもの、事前の情報収集は怠らない。令和のご時世に爆サイのハッテン掲示板を読んでは刹那的にジョニーを育成するなどした。日に日に恋しくなるあまり、pornhubで"trap" "femboy"で調べることが増えた。最近マジで男の娘でしか抜けなくなってきた…
とはいえ、機会が無かったというより、行くには腰が重かった。遠いし、なんやかんや言って怖いし。仮に行ったとて、初めてが男とかマジかよ…という、一世一代のルート分岐への危機感もあった。
 
腰が重かった理由は金銭以外にも頭髪、体毛の処理がネックであった。髪を伸ばしたいと思っているというより、むしろ短髪な自分が嫌いなためいつも伸ばしているのだが、切らねばならない用事があった。このチャンスを逃すと3ヶ月は行けない。
かなり髪が長くなければ女の子の髪型にはなれず、圧倒的に見劣りするためだ。最低限、耳が隠れなければ女の子のような姿にはならない。ウィッグは高く、実家暮らしでは家族バレのリスクもあり保管が難しい。入念に普段寄らない駅から一時間歩いて、二度と行かないであろうセリアでエクステを購入してみたのだが、全く似合わなかったので採用を見送った。そんな日々を過ごしながら、やがて散ると知りつつ春を待つ芽さながら辛抱強く、地毛がショートボブを装えそうな長さになるまで待った。最終的にアルミンへアーになった。
 
特に体毛は最悪であった。この体の持ち主は線が細くやなで肩で、一見女の子のような体系をしているが、それに抗うかのごとく何故か剛毛である。キンタマにさえ、頭のように毛量がある。意味が分からない。
4日ほどかけてゆっくり脛毛や乳首の毛を抜き、ケツ毛と胸毛とギャランドゥは剃り、タマ毛は泣きながらブチブチと抜いた。すべてはリユース・サイコ・デバイスを駆る戦士となる為だった。
腿に対して脛の処理が甘かったが、当日はニーソを履くのでうまく隠した。腋毛は一人では処理しきれないため、短くそろえた。男の娘を全脱ぎさせてしまったら「男」でしかないため、脱がされることもなかろう。
とにかくこの4日だけで剃刀一本の寿命を終わらせた。まるでマンションの一室で入念に死体を解体するかの如し。
 
また、いくら入場料が圧倒的に安いとはいえ、正直その金すら無かった。3か月おきに大金が入るため、所持金が最も多い時期を狙った。髪が長く、なおかつ金がある状態はめったに訪れないため、その数日を狙わざるを得なかったのだ。
かつてこれほどまでに計画的なオナニーがかつてあったであろうか?
 
 
否。
その先で待っていたのは、オナニーではなかった。
 
 

 
 

入店

電車に乗って2時間ちょっと、いつでも帰れると軽く考えて都内某所へ赴く。小雨が降っていた。未だ真冬の気候であったので、チノパンの下のつるつるな下半身は、早くもスカートを履いたかのようにスースーして鳥肌を禁じ得なかった。
都内のすさまじく治安の悪そうな通り。中国人がハンズフリーの通話を大声で通行人に聞かせながら歩いている。「街中での客引き行為は禁止されております」と機械的に繰り返されるきわめて語気の強い街頭アナウンス以外、日本語が聴こえない風俗街。地元で暮らす一般市民が近づくことは殆ど無いだろう。大きな荷物を持ってここを通ってはならない。人がたむろしている場所は通ってはいけない。
 
裏通りにはその雑居ビルが苦しそうに生えていた。日の光も届かない風俗店のテナントがいくつも集まる古いビル。一階にある目当てではないソープの前で、ボーイが煙草を吹かしている姿を横目に、冷たい地下行きの階段をひとつ降りると、美川憲一のステージ照明の如き妖艶なデザインの看板がある。何故オカマのイメージは紫色と決まっているのだろうか。
ついに、来た。
ビデオボックス・アンダーグラウンド
かつて全ての利用客がそうしたであろうように、今更自分は桃色風景に興味のない硬派な紳士である風を装い、曇ったドアの押しボタンを押す。おじいちゃんが経営している模型店もかくやと思しき、どこかくたびれた自動ドアが金切り声をあげて開閉する。
いつものように、ラーメン一蘭のように屈まなければ顔が見えないカウンターからゆってぃのような声が聴こえる。オフショルダーの服から男の肩が見える。
人と話す時に顔を見てしまうのが普通なのでつい覗き込んでしまうのだが、ゆってぃはこちらではなく斜め下の案内用メニューを見ていた。すいません。僕が場違いでした。
 
 
料金システムは至って良心的である。
ハプバーが男女で利用料金が異なるのと同じように、純男よりオカマのほうが若干安かったり、サービスがつく。オスのほうが客としての母数が多いため金はオスから取るのである。
しかしここは安いなどという程度のものではない。セット料金はそのあたりのボックスと大差なく、オカマであれば最低限の入室だけなら、1拓也程度で済ませられる。シャワー、コインランドリー、寝具貸し出し、アメニティ、軽食といったメニューも無論ある。
断固オカマのセットコースで入室する。オカマは変身後に証拠を見せる必要があるので「ゆってぃに着替えた後の格好見てもらえるんだ…」とマスクの内で恍惚に粘つかせた口元を隠しながら鍵と伝票を受け取り、個室で女の子になり、ヴァイオレット・ボックスの中を冒険することにした。
内装は努力は感じられるのだが、長い歴史のある店でもないはずなのに、そこはかとなく趣深さを感じざるを得ない。
用途やコンセプトの割に思ったよりボックスにありがちな瘴気を感じないことは評価点か。男しか入店できない割には空気がいい。徹底している。
この階だけを利用していては、狭く小汚い女装可能なだけの仮住まいでしかない。
 
否。これは全貌ではない。このフロアは「ボックス」としての体裁を保つためにしつらえられたダミー。むしろこちらが別館に過ぎないと言っても過言ではない。
詳細はおまけコーナーにて後述する。
 
 

 
 

レポートの前に

ここからは性的体験を織り交ぜて書く。
事前に丹念に丹念を重ねもはやそれ自体が鍛錬と呼んでも過言ではない程度に集めた利用客の記事を読み漁り予習した賜物もといトホホの数々だ。
他にも常連の話を爆サイほかゲイコミュニティの書き込みを読んで武者震いを禁じ得なかったものだが、ああいったものはわざわざネガティブなことを書きたがる輩のたまり場なので信じてはいけない。
あんなものを書いているのは「行けばヤレる」と勘違いして誰にも愛される努力をしなかった者の末路である。グーグルマップのレビューで精神科の悪口が書かれている現象に似ている。

これが私である。私の絵がこんなに上手いはずがない。つまりどう描いたかというと…
正直に書くと、かなりモテた。
ここからは特定を避けるため、一部実際とは異なる描写をする(やってきたことは本当である)。
また、特定材料や直球表現になる文言は伏字【中島涼太】とする。
 
 

 
 

レポート1:マリリン広場

なんとモノクロームなネーミングであろうか。
別館のある地下二階へ降りるには、地下一階の店舗から一度出て、外階段を下る必要がある。
地下の飲み屋のような薄暗い踊り場。鉄板をカンカンと鳴らして降りる階段の真下には喫煙所がある。
休憩中に上を向けば必ず、階を移動するオカマのスカートを覗けるようになっている寸法だ。見たい者と見られたい者、二人を繋ぐ暗黙の場。作った奴は天才だ。
それだけでなく、なんだかビル風のようなものが強い。人為的に吹かしているのではないかと思うくらいだ。故にマリリン広場。

ノーベル賞。本当はデザイナーズ物件のようなものではなく錆びて塗装が剝がれつつあるので真下に居るとパリパリとした破片を浴びると思う。
階上のトイレや自販機に用があったため一日で3回ほど往復したが常に誰かしら居る。出待ちなのか、ナンパをしないのか、出来ないのか。仕立ての良いスーツ姿の純男がパンティーを求めて喉が痛くなるまで喫煙に耽るとは甚だ涙ぐましい光景である。オイオイ、ここは初めてか?
 
ただスケベを待っているだけの意気地なしにパンティーを見られるのは心外なので普通にスカートを押さえて昇ったのが、まるで己が女の子になったかのようで楽しかった。
わざと後ろからついてきてくれる漢には、おもむろに屈んでニーソを直すしぐさをして見せてやった。それでいい。
 
そして階下に自動ドアがありその中はハプバーというわけだ。こちらは電子機器等を預けるカウンターやロッカーを過ぎればごく普通のバーのようであり、しかし奥にはプレイルームがある。ボックスで追加料金など事前の手続きを済ませ、出入りや利用が自由になるアクセサリーを身に着けてもらい入室できるようになる。
ハプバーの詳細は後述。
 
 

レポート2:めっちゃ痴漢される

トイレの帰りなどに何度か流し台で手を洗う時や他の男と話している時、大体誰かしらが足音を殺して迫って来ては私の腰や尻を触り、逃げない私の腰に手を置いて腰を押し付け、触られて善がる私の容姿を鏡越しに褒めてくる。
廊下ですれ違う際にはナンパせず、ジロジロ見てくるだけの癖にこうして無防備な時を見計らい話しかけてくるのはマナー違反というべきか、男として意気地が無いのではないかと心配になる。
ただ私が各設備に用があると偶然を装って硬派オジサマが言葉巧みに尻を触りに来ては頻繁に容姿を褒めてくるので嬉しかった。体をいやらしく触られるのも快感であったと言わざるを得ない。
 
普段は国語でも教えていそうな先生を思わせる、年相応で渋めな出で立ちのオジサマが壁ドンをしに来て、私をメス扱いし口説きに来るのだ。
その時は既に相手が決まっていたため構っておられず、両手を顔の前で合わせたり内股になりながら、できるだけ優しい声で
『ごめんなさい♪パンツ見せてあげるので今日は許してくださいね♪』
と告げ、口の前に人差し指を出しながらゆっくりとスカートをたくし上げ、中を見せて差しあげた。ブルアカのノアちゃんのファンアートでよく見るやつだ。そうするとオジサマは唸った。
 
 
 
 
「おお…!!」
 
 
 
 
かつてガリレオ・ガリレイの提唱した地動説が世界に認められた瞬間であった。
 
 
 
 

↑( ;^^)?
オジサマは深く唸って自らの股をさすりながら「あアァすっごいかわいくてエッチな下着…!お姉さんすごくかわいいから、もうこんなになっちゃったよ…!」と一人で上手に組み立てたテントをアピールしていたので、断りながら少しだけ名残惜しそうにそれをさすってあげた。ガッチガチの巨根であったので本当に名残惜しくなってしまった。
「あ~…触ってくれるなんて優しいね…!!!」と渋い声で素直な反応、撒くのに一苦労したが、これが一番楽しかった。
なお中途半端に優しくすると付きまとわれる危険が伴うので推奨しない。
帰るまでの間に合計4人からチンポを押し付けられた。
 
 

レポート3:【中島涼太】ブース

ボックスにおいてとりわけ異彩を放っているのが、【中島涼太】ブースである。
無駄に入り組んだ壁板や収納類の配置の最奥には、プリクラのように脚だけがチラリと見えるカーテンがふたつかかったブースがある。まるで男湯と女湯のようだ。
中は他の棚周辺よりとくに薄暗く、所せましと棚と本が並んでいるのだが、それらの大半は「電車」「バス」「図書館でバレないように」といった記述の桃色猥褻文書の数々で埋め尽くされた異様なフェティシズム空間となっている。そのエリアこそがそう呼ばれているらしい(ネットで読んだし常連からも聞いたが、公式からはどこにもそのような言及はない)。
カーテンの奥に入るなり、三方向をそれら桃色猥褻文書が覆う。隣の間とのしきりになっている棚だけは特に中身がスカスカになっており、隣の間がよく見える。実はここが目的であった。

こんな感じ。
なるほど。ゆっくりとお近づきになりたい者は目当ての相手と反対側の間に入り、誘惑したりされたり盗み見たり、手を伸ばしてみたりでき、合意が確かめられたならどちらかにワープして続ければよいというわけか。
そして第三者も、足下や隙間からその営みがチラと見られるというわけである。間の中にはロッカーもあるので、既に誰か入っており、ムラムラしているのかもしれない。
 
実際にはこのような感想を抱いている余裕はほんの2秒にも満たない時間であった。
私の背後には既に個室を出る段階からつけてきたのであろう、出待ちの者がいたからである。
 
 
その男は物音もなく、わたしの腰にスッと手を当てる。よもやここまで早いお出ましとは思わなかったため、私は素で小さく悲鳴のような息を漏らした。道端でやられたら普通に殴り返している。
 
 
───もう!?
 
 
棚の間に置いてある姿見から、純男であることがわかった。私より少し小柄である。
男は耳元で深く息を吐きながら、その手をゆっくりと下に撫でまわす。腰から尻へ、尻から太ももへ。ニーソに指を突っ込んでは体温を確認したり、絶対領域を堪能したのち、スカートの中に手を入れ、私のパンティごと尻を撫でまわし始める。
会陰という性感帯がある。そこを触られ私はつい腰をくの字にすると、尻の谷間が男の股間にヒットした。
男は何を納得したのか1秒ほど体を離し、その後大きな息を吐いて私の腰をガバッと掴んだ。桃色ビデオでもよく見るペースアップだ。私は断固女の子のような悲鳴を上げた。
 
 
──外だったら犯罪沙汰…外だったら犯罪沙汰…犯罪沙汰と中島涼太って似てるな…
 
 
私は必死にそんなことを脳内で唱えていた。
男はやがて腰を密着させ、尻の谷間に股間を押し付けながら、私の太ももの前面をさすり始める。ロッカーに押し付けられ、男と挟まれる形になる。
途中でパンティの側面に紐の感触を確認され、スカートを捲られ「あぁ…エッチなのつけてるねェ……」等と言われた。
 
 
『…っ!……ん……』
 
 
こうなることは予見していたため、素面でこんな店を利用するのは心がもたないと思い来店前に立ち飲み居酒屋で一杯補給してきたが、これである。かなり冷静ではあったが、シチュエーション自体は好みであったため身体はナチュラルに感じていた。
 
そのまま尻を股間に押し付け、上下に動くと「あァ…!!自分から腰なんて動かしちゃってえ…」と桃色ビデオよろしくいささかサムい台詞を言われる。こういうこと言いたい人なんだろうな…
 
その時私は"このままならわりといける"と同時に、それよりも遥かに"多分本格的に始まると萎える"と予感していたため、私も全力で堪能した。
 
「なァ、こっちむいてェ‥・?」
そんな矢先に後ろから右腕を掴まれ、拘束される。相手の左手はというと、いよいよパンティの中に入ろうとしていた。
『ひゃあっ』
なにより桃色遊戯の最中、知能指数が下降中の男に「触られるのが好きだが顔は見たくない」と伝えるのが難しいため、従わざるを得ない。私とて男であるから理解る。嫌ならブースを出ればいいだけの話だが、ありもしない目先の刹那のワンチャンにかけて粘ってみた。こちらの知能指数も大概であったと言わざるを得ない。
 
振り向かされた先には、フットボールアワー岩尾のような男が居た。私はすぐに目をそらした。
 
「あぁ~大きい眼、かわいいなぁ…」
「なぁ…顔見せて?…キスせえへん…?キスさせてぇ~…」
美川憲一のステージもかくやというほどの、どこかで回転する紫色の間接照明に青髭を浮かび上がらせながら、岩尾が言葉を発した。私は化粧をしていないのでマスクで顔を隠していたが、顔を見せれば同意のサインと受け取られてしまうに違いないので丁重に断った。
私はキスすら誰ともしたことのないピュアピュアおじさんであったので、流石に初めてが岩尾はな…コイツは無理だわ…とやはりどこかで萎えつつあった。
 
『んぁ…チューは…ん…ダメです。あっあっ』
ところがチンポは触られていたので元気であった。キスを断ったので、怒りからか手が少し加速しているのが本来の意味で嫌らしい。「体は正直なのに」などと言い始めるのも時間の問題である
 
「なあ…ブラしてん?ブラ見せてぇ」
 
数十秒ほど向き合う形で股の前方を触られたあと、岩尾はポジションチェンジを提案してくる。確かに一応見せるにやぶさかでないためにつけているので承諾する。
 
顔を見るのが嫌なので姿見の前に立ち、再び背中を見せ好きにさせると、より岩尾の吐息が加速した。後ろから手を回され、私のブラウスのボタンを上から開け放していく。私は頑張ってハイトーンな吐息を聴かせてやる。暗闇なのでいささかたどたどしい。ボタンを傷める。この日のためにリクルートスーツ用ではなく、しまむらで安いのを買っておいてよかった。最悪捨てる覚悟で居た。
ときにこの現世には、浮きブラなる言葉がある。ブラジャーのバストが小さいと、屈んだ際に乳首が見えてしまうほどカップが浮いてしまう現象である。
開け放たれたブラウス。私もそれであったため、隙間から手を差し込まれ、こねくり回され体が悶絶する。姿見の中ではひたすらに、だぼだぼの癒し系JKを装った限界おじさんと自分の背後で眼光を紫色に輝かせる岩尾が蠢いていた。
 
 
「乳首感じるんだねぇ…感じるところ、もっと見せてェ……?」
『ん…』
私は相手がキモすぎて会話をするのが無理になっていたので、とりあえず身を委ねた。もはや目を閉じれば抜けるAVと同じだった。早くも「こんなものだよな」と、現実と向き合う覚悟と、一手先に迫りつつあるであろう"本番か何か"にどう対処しようか想像していた。
 
乳首の振動が加速し、私が悲鳴を上げたころ、背後から突然、酷く不愉快なオスの臭いが立ち込める。この臭いは知っている。
「ほらァ…見てェ…!!!」岩尾は私の隣に出て、おもむろに腰を突き出す。
 
それは紛れもなく陰茎であった。
勃起していたがまだ皮をかぶっており、自分のものよりいささか小ぶりであった。それを見た私は内股で手を顔の前にやり、その日最大を更新した女の子のような悲鳴を上げてしまったので、相手を喜ばせてしまった。
露出を見てドン引きする姿が相手を昂らせてしまうのは本当である。
 
「なァ…おじさんのおちんちん、もうこんなになってん…!!!!触ってェ………触ってェ…!!!!!」
 
あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…
 
あ〜〜〜〜〜…………
 
ダメ。
 
その時私は蛙になった。
 
 
 
 
回避不能
 
 
男汁が服につかぬよう袖をまくり、覚悟を決めて、触れてみる。汗でべたべたする。男から空気が抜ける音がする。
『うぅ…こう…ですか……?』スローペースで手を動かすと、岩尾の手も加速し、私のパンティの中の手を筒の形にし、上下に動きはじめる。「一緒におちんちん触りあお…??」
私はまた悲鳴を上げ、過呼吸になっていた。自分が気持ちいいのはよいが、相手のものを触らされるのは不愉快だった。「こんなおじさんとエッチなことするなんて!である。」それを隠さない態度で上下に扱ったが、岩尾にはそれがまた乙なシチュエーションらしく、昂りは止まらないようであった。
チンポって本当に臭いんだ…という絶望感が強かった。漫画で目にする「おじさんのチンポくっさ💗エッチな臭い💗💗」といった表現はどこから来たのか?
 
 
「アァ……!!!!アァ……!!!!!!」岩尾のうなり声。
どうやら初見で小ロンドに足を踏み入れてしまったようである。こちとら塔のラトリアの叫びで対抗したい気分だった。
 
─ていうかこれどこまでやるの?
 
二人横に並んでのクロスプレイ。
岩尾は既に私のパンティからチンポを取り出し、上下に扱っていた。腰が砕けて逃げられないので私も2分ほど岩尾のをそうしていたが、ただそれだけが懸念であった。そこまでは望んでいないのだ。
どういうわけか、フロアのいたるところに自販機感覚でウェットティッシュがあるのを思い出した。無論本棚の一角にもある。
 
─とりあえずここで抜いて終わりにしてやるのがいいか…?最後までやりたくねー。
詰みかと思ったその時、カーテンがゆらりと踊り、もう一人の男が入ってきた。
 
その男は私より小さいが、体重は2倍もあるであろう大男で、私を見るなり「ホァかわいい…………!!!!!」と唸り、岩尾と並んで私の空いた片乳と尻を触り始めた。なんか知らんけど超気持ち良かった。2vs1が始まった。
大男もまたキスを迫ってきた。しかし私がつい袖を捲っていない方の萌え袖で顔を隠すと突然両手を離し自分の顔の前で合わせ、蠅のように擦り出す。
 
 
「アッごめんネ、本当に嫌だったら嫌って言ってもいいからネ、ごめんネ、そういう場所だからついネ……」
 
 
男は急にオタオタし始め、ムジュラの仮面のキャラクターのような話し方になった。やや癖が強いが、どうやら友好モブのようだ。
 
 
岩尾は望みでないシチュエーションなのか、そこで私と自分の獲物を収める。
最後にアイドルに詰め寄る厄介ファンのごとく、陰茎を触っていた私の手を掴み「なぁ、名前教えて?」と言う。
 
 
 
 
???
 
 
 
 
──────名前???????????
 
 
 
 
まずい。
 
 
"どれ"にしようかな…
 
 
既にある自分の名前のどれも使うのは危険であるため、私はその場で江戸川コナンとなった。
 
 
 
 
『えっと…
 
 
 
 
【中島涼太】です…』
 
 
 
 
男は【中島涼太】ちゃんまたね、と告げ、そそくさと退出する。
【中島涼太】ブースの中には、エッチなことをしているところを知らんオタクに見られて恥ずかしい新生【中島涼太】とモッサリモッチリとした挙動不審な巨漢の二人が残った。
 
 
それが私と「ナイトくん」とのファーストコンタクトであった。
 
 

 
 

おまけ1:客層

ナイトくんについて触れる前に、ここで一度利用客の属性や店内について触れておく必要がある。
あくまでシャカフテ向けであり、趣向や性自認などの問題には一切配慮しない。
 
オカマ
女の装いをしているものである。利用客も店員も、半分ほどこれだ。つまり私もそう。
ただ女装をする場所やコミュニティを探して入店するだけのスケベお断りも居れば、メスとして桃色遊戯に耽りたい者も居るようなので、純男たちからヤリに来たのかそうでないのかをナンパの度頻繁に問われて大変である。
私は確認できなかったが、工事済みのニューハーフも来店する模様。
 
 
純男
すみおと読む。見た目も心も男。男同士の性的接触が好きな者も居るであろうし、相手がメスの装いでなければヤレない者も居るかもしれない。
 
 
オタクくん
雑に言えば「男に逃げてきた奴」の可能性が高い。誰にも愛されず、誰も愛せず、恋愛弱者、性的弱者であり、到底ノンケのハプバーなど行こうものなら手ぶらで帰るハメになる。ここでなら出会いや桃色遊戯にありつけるのではないかとか、自分は男も抱けるとか、もう男でいいやと自分に言い聞かせているだけかもしれない。
真っ黒なダンロップデスノートのLのような英字が書かれた真っ黒なTシャツのみすぼらしい出で立ちで、奥手である。基本的には無害だが良くて素人童貞なのでテク無しである。
ここまで書いておいてなんだが、私も童貞なのでオカマとこれの合併症といったところである。いや俺は共学だったしオタクの女の子に結構モテたし高校時代先輩からコクられたことあるけど
 
 
ヤリモクくん
ブロックされない。オタクと併発している模様の者も居たので、距離感のバグった童貞なのか、あくまで性には慣れていて気分でオカマともヤリに来ただけなのか分からない。自分より弱そうな存在にしか構わず、相手が一人の時を狙う。声をかけるより先に手を出してくる無敵の人。岩尾。
ノンケワールドでは当たり前なはずの「努力してモテて内申点を稼いだ者がけがヤれる」という感覚が狂っており、スウェットやハーフパンツにパーカー姿と、見知らぬ他人を誘い性の駆け引きをするにはいささかラフすぎる格好で身体をまさぐってくる。オカマとはゴミ捨ての帰りにタバコを買いに行く恰好でヤレると思われているのだろうか…?一度接敵した。
 
 
ナイトくん
オタクやヤリモクの上位種にあたる。私のようにか細く自分より弱そうなオカマには得意気に接してきて道案内をしてくれたりする。男子校時代に可愛い系の子にガチ恋してそう。オカマちゃんはボクがヤリモクから守護(まも)る!といった気概が見える。先輩常連とは話したことも無さそうだが…
 
 
硬派
淫夢動画でお馴染みのサムソンでも嗜んでいそうなオジサマ。普通のゲイと言った感じだ。コミュ力に長け、酒を奢ってくれる姿勢を見せてくれたりと余裕を感じた(対価を要求されると嫌なので断ったが)。尻を触るのが上手い。おそらく桃色遊戯においてのテクにしても最高であろう。
話したが、外堀を埋めるような世間話は一切せず、開口一番「君とセックスをしたいが一緒にどうだ」といった態度を隠しもしない。名前を訊くなり「今日はもうヤッたの?へぇお尻?まだやれる?おじさんとどう?」と誘う。バーの奥にあるプレイルームにオカマを連れて行ってはすぐにイカせて帰って来て、またすぐに他のオカマのナンパに向かう戦闘民族。人生が楽しそうだと純粋に感心せざるを得なかった。今度会ったら最後、村上春樹の如く次のページで事後になっている。
 
 
見る専
喫煙所に長居したり、フロア中をフラフラしていたり、バーで一人で飲んでいたかと思えば居なくなっている。ノンケに見えるし、それ以上に勇気が無いのかもしれない。
サラリマンの出で立ちをしており最も清潔感がある。こういう人が一番好き。たぶらかしたい。
オタクと併発している場合は出会いの場に来ておいて、バーの電子機器持ち込み禁止エリアの前の壁によっかかり一人でスマホゲーをやっているので最悪である。こんな奴のところにマシュのコスプレをしてくれる男の娘など来るはずがない。
オタクはマジでこういう場所で一人でゲームをしたり変わったものを身に着けることで話しかけてもらうのを待つのをやめなさい。自分から関わりに行かんかい。自分の持つ情報を与えて自分が上でなければ成立しない関係に陥るのではなく、相手を立てて情報を引き出さんかい。
 
 
10人程度であったがこんなところであろう。私が行ったのはあまり混んでいない時間帯らしく、やはり金曜の夜や土曜のほうがごった煮になっているらしい。
先述の通り、女性は一切立ち入り禁止である。
あえてここまで書かなかったが、つまりこのボックスは、ハッ島テン太なのだ。
今更だが私はゲイな訳ではない。普通に女の子のおっぱいとか揉みたいし、かわいいと言ってくれる人とであれば桃色遊戯に洒落こむもやぶさかでないと思っただけで、そもそも自分以外全員嫌いだ。
性的対象はおそらくシームレスな気がせんでもないが、誰も愛せていない。
 
 

 
 

おまけ2:店内の様子

店内は平たく申し上げてもボロ家と呼んで差支えないものであった。床も壁も緩く感じる手ごたえで、如何にも「知り合いの内装屋に頼んだ」といった感じだ。"Back Rooms"を彷彿とさせるセンスの古臭い柄の壁紙、カウンターに置いてあるもの、POP。割り当てられた個室もドアの建付けが悪く、薄すぎて押すとギシギシ反応する壁も、今風ではない床も、なんだかシミっぽい。壁の巾木が歪み、スキマは埃だらけ。DVDプレイヤーなどの室内の設備も最低限文化的といったところか。

ボックスのカウンターは大体こうなっている。俺が知らないだけでラブホの有人フロントもこうなのか?もしかしてフロント自体が無い? ビデボの内装は知っているのにラブホは知らない自分を理解したくない。
九龍城と見まごうほどの古臭いマンションの廊下よろしく生活感に溢れムードに欠けるのを防ぐため、ロッカー、カーテン、ゴミ箱、自販機とありとあらゆる備品がしきりになるように配置されていたり、無駄にジグザグしている。桃色書店だけでなく文化祭のおばけ屋敷を彷彿とさせる。以下に詳細を書く。

ボックスの全体図。間取りなどは事実とは異なります。同じ設備ですが本当はもっと小規模です。
①入口
受付でゆってぃが待っている。グッズや軽食の購入も可能。
先述のイラストの通り、衣服なども扱っており女装アイテムを持たずに入店しても品々を揃えられるようになっている。モノによっては貸し出しも。
とくに化粧品売り場がある点がウケる。
 
②自販機ブース
飲み物、スナック菓子や菓子パン、SOY JOYやカップラーメンが出てくる自販機や給湯設備などがある。
最も縦横に視線が通るエリアであり、入店時や個室から出てくるオカマを出待ちするための場所と化していた。
しかしこの店はダミーであるため設備の状態が悪い。
 
③ロッカー
コースや追加料金で利用可能とのこと。狭く薄暗いので痴漢されやすそう。
荷物は部屋に置けばよくないかと思うのだが、よく考えると部屋に他の客を呼び込み遊ぶ際は大きな荷物をこちらに避難させる必要があるのだろう。
水回りを利用するオカマを狙う魔の手があるので用も無い奴が終始ウロウロしている。月極の大きなロッカーを借りることができるが何に使うのだろうか?
 
④個室

真っすぐ寝て手を伸ばすと反対側に手がついてしまう。
ベッドの幅が強烈に狭いので、部屋だけでおそらく横幅120×奥行200×高さ250cm強といったところか。
完全個室ではなく、全ての天井が繋がっていることに貧乏臭さを覚える。壁も薄い一枚ものであるに違いない。全国チェーン店の個室ビデオ店なるものは、1帖のカラオケボックスと呼んでも良いほどドアから壁までがしっかり覆われているのが当たり前だが、こちらはむしろネットカフェに近い。隣人にスケベボイスを聴かれた方が興奮するためセーフ。オジサマと出くわした際、部屋においでよと誘われたが断った。
 
個室ブースとの境界線に大通りがあり、大きな姿見がヴァイオレットの光を跳ね返している。その向こうは図書、ビデオ、アイテムの数々がある。
頻繁に視線が切れるように出来ており、死角が多い。いくつか脚立置き場や靴屋のようなスツールがあり、時々そこで遊んでいるカップルの気配があった。ゴミ箱完備。
桃色ビデオはそこそこに、個室ビデオ店特有のそもそも借りさせる気の無い状態が悪い一般向けのものも多い。
各所に安物のパンティが出てくるガチャガチャ等もあり、桃色書店を思わせる。
ボックス特有の金庫型の自販機も置いてあり、コンドームやローションのほかにオナホールなどの玩具が売られている。
なおオカマは立ち止まっても通り過ぎても絡まれる。
 
⑥【中島涼太】ブース
先述の通り、本フロアの実質的なプレイルームである。
 
 
続いてハプバー。こちらも事実とは異なるが存在する設備はほぼ同じだ。

基本は変わらず、間仕切りが異なるかたち。
①入口
ロッカーの鍵や持ち物の管理などに利用される。
 
②ロッカー
トイレやシャワールームはこちらにもあり、利用の際は通らなければならないためここで出待ちが発生する。
 
③バー
カウンター、ソファーの大小、対面席、最奥には口説くための暗いカウンター席と充実している。
マジックミラーになっており、奥の口説きコーナーから大広間は一方的に見えるようになっているのがオシャレ。性行為をしてはならないらしい。
 
④プレイルーム
表向きにはシアタールームとお座敷ということになっているので、軽食とドリンク片手に利用可能。
シアターの席の後ろには上映席があり、各々で好きなものを流せるらしいが、フロア内で最も隠れやすいのでもっぱら桃色遊戯コーナーでしかない。
元々大昔からハッ島テン太として利用される劇場というものが全国的に存在しているのでシアターは違和感はないが、バーの廊下を通り過ぎた先に琉球畳と座布団がありテーブルが衝立に仕切られていくつも並ぶお座敷というのはなかなか風情がある。
 
 
以上。
 
 

 
 

レポート4:ハプニングバー

ナイトくんとはバーでその後の行動を共にした。誰から見ても性的魅力に欠ける男と一緒にいれば、第三者に絡まれる事態を回避できると思ったからだ。実際、岩尾が何度もバーの広間をウロウロしたり、私の反対側の角に座りテレビを眺めながら貧乏ゆすりを繰り返していた。
 
 
バーなるオシャレ空間自体が人生初の利用であったので勝手がわからなかったが、どうやらバーテンがカウンターから動かないあたり、こちらで一杯頼んでから好きな席にグラスを持って行っても構わないようである。最初に選択を間違えなかった自分のセンスに感謝せざるを得ない。
ナイトくんはここで頼まず、外で買ったコーヒーで繋いでいた。ダサすぎる。
 
カウンターには既にオカマの先輩方が着いていた。どうやら面識があるらしい二人組が二組座っている間に一つだけ空いた席があった。注文がてら少しだけついたので、ついでに先輩方に話を振ってみる。
『ごめんなさい、ちょっとそこのメニュー取って貰っていいですか?ありがとうございます♪』
両手の指を合わせながらお願いをしてみる。自分でも愛想が良いと思った。目も合わせに行ったが、そのお姉様はメニューという作用点しか見ていなかった。も~!僕がかわいくしてるんだから見てよ!!
 
 
『あっ、思ったよりずっといっぱいあるんですね〜』と私。「ここに書いてないヤツ頼んでもいいわヨ」と、隣のお姉様は目こそ合わせないが返事をしてくれる。「いじわるしないでくださいよ〜!」と女装をしていないもののどこか中性的でバンドマン風のバーテン男。かわいい。ノリの良い日は女装をしている日もあるのだろうか。
材料さえあればマイナーカクテルも出してもらえるということだろう。私がもう少し若ければここでシャンディガフくらいは頼んでみようかと思えたが、こんな所でジャブを打っても仕方ないのでメニューにあるレモンサワーを頼んだ。私が普段「コップ」と呼んでいるような何一つ飾り気のないグラスに入ったレモンサワーを受け取り、軽く会釈する。
左右に気を付けながら、脚を開かぬよう椅子を回転させて丁寧に、育ちの良い少女であるかのような立ち振舞いを意識してバーを歩き始める。壁に寄りかかっているナイトくんがバッと枝豆のように小さな目を精一杯見開いたのが見える。
 
 
『おまたせしました〜♪』
 
 
ナイトくんは【中島涼太】ブースで「バーに居るからよかったらまた会おうね」と言っていたものの、待ち合わせはしていない。私から会いに行った訳だが、この方がなんだか、ナイトくんからすれば自分が必要とされている感に駆られるのではないかと思ったので媚を売った。ナイトくんは「待ってたよ。ホントに来てくれたんだ」とウズウズしているようでキモかった。可愛がってくれるならいいか…
 
 
誰もいないロングソファの角に座る。壁とナイトくんに挟まれながら、レモンサワーが半分に減るまで、ひどく他愛もない話をした。歳が近い話の合う人が居らず困っていたとか、スマホゲームがどうとかナイトくん。学生時代にハマっていたアーケードゲームの設置店が減ってきたと私。
オタクは世代論になるとすぐアニメやゲームの探り合いになり、いくつも共通点があった我々はすぐに打ち解けた。どうやら少し歳上らしいので「じゃあ先輩ですね💗」と言ってみると、そのあたりから妙に私に対しガッつきはじめた。
 
 
─これがコイツのスイッチか。
 
 
ナイトくんは、そんな君がどうしてここに?とか私にとって都合の悪い、設定を考えるのが面倒で仕方ない話をするようになってきたので、首を傾げながら萌え袖のまま左手では髪をかき上げウインクをし、右人さし指を立てて「しーっ」とジェスチャーをすると嬉しそうに少し黙った。その後は私の容姿の話になった。
 
 
「その上着かわいいね、小動物みたい」
『そうですかあ?』
「女の子よりかわいいよ」
『ありがとうございますっ
これ、長いこと着てるから伸びちゃってるんですけど、萌え袖の服を着てると女の子みたいな気分になるんですよね~』
 
 
ナイトくんのジャブが長すぎるので、質問に答えながら、私はあざとくカーディガンをずらして肩を出し、前に乗り出してナイトくんの内ももに手を添え、耳元で囁いた。
こんな場所で友達作りをするつもりはない。桃色音声作品でありそうな文言を散りばめた。
 
『オナニーするときもよく着てるから、これを着てるとエッチな気分になっちゃうんです…』
『だから今日、エッチなことをするために着てるんですよ』
 
顔を離して『本当に言っちゃった』と漏らし、わざと暑がるジェスチャーを見せながら上目遣いで目を合わせてみる。そう言うと、ナイトくんから顔を近づけてのアンサー。
 
「キミ、ほんとうにかわいいねぇ…」
私はいわゆる「ぞいのポーズ」を見せながら恥ずかしそうに微笑んだ。
 
 
 
 
こいつキモ。
 
 
 
 
───今日はカマレズ目当てのつもりだったんだけどな。
 
 
 
 
『今日は太もも出すから頑張って下半身の毛を処理したんです!だからいっぱい触っていいですからね…』本題に入り始める。
 
ナイトくんは本当にべたべたと触り始めて「あ~すべすべでスリムで座ると潰れて、ムチムチになって…本当に女の子みたいなエッチな脚…!」と私の脚を堪能する。時々股の中まで手が忍び入るので、そのたびに私は体を震わせてキュンキュンと小さく鳴いた。
 
私は少年時代から自分より強そうな同級生の男に「女の子みたい」と言われたり、身体をいやらしく触られるなどの性的な接触を受けたことがたびたびあった。学校で、公衆の面前でされるので流石に身を任せるわけにはいかず『最低』と流していたのだが。
今こうして、合意のある環境で同じことをされ、可愛がられるのは、すさまじく気持ちが良かった。
私はこれまでもこれからも、こういった、青春時代に拾えなかった体験の抜け殻を、残りカスを、かりそめを、拾って生きるのだ。これから先、幾つになっても、それは変わらないのだろう。死ぬまで、ニセモノと一緒なのだ。
 
『も~エッチ…』といったイチャつきにしか思えないやりとりと並行してそのままいくつか会話があり、次第にこのフロアの話題になった。
 
「奥にはいかない方がいいよ…バーの中はとりあえず、知らない人にいきなり捕まって体を触られたりはしない安全地帯だから」
フリだと思った。『へぇ~??』私は女の子のような腕の組み方をして、手を口の前に出した仕草のまま冗談めいて返す。
『今までずっとエッチな触り方をしてきたのに、これで安全なんですかっ💗💗』
 
 
『じゃあ、奥にある危ないところに行ったらどうなるのかな…
 
僕、ちょっとくらい乱暴にされる方が好きですよ………?
 
 
 
先輩、一緒に来てもらえますか…?』
 
 

 
 

レポート5:シアタールーム

赤い非常灯のようなものが壁や足下で等間隔に光っている。
数十人分は席のある誰もいない広間。何も映らないままのロールスクリーン。ヴァイオレットの間接照明も、うっすらとしか届かない。
ナイトくんの手を引き、客席の並ぶ緩い階段を昇りながら、より暗い上映席コーナーへ辿り着く。
カーテンを開け、DVDプレイヤーやプロジェクターのリモコンが並ぶ上映席を通り過ぎ、一番奥にスツールが並んでいるスペースへ向かう。
ここが何のためにある部屋かなど、最初から幾多の潜入レポートを読んでいたので知っていた。やるならこことも決めていた。
 
 
 
凱旋する気分でそこに向かいながら、こう考えた。
 
 
───どうして私は、こんなことが出来るのだろう。
 
 
女装をして他人とコミュニケーションを取ることは学生時代にも行った経験がある。
慣れ親しんだ友人に太ももを凝視され、ふざけて返した程度であるが、それとは違う。身も心も素で女性になったかのように振る舞える。否、女性ですらここまではしないだろう。
手つきや腰つき、座り方、距離感、言葉遣い。普段と全く異なる。私はその4時間程度、全くボロも見せずに、演技とすら呼べない程自然に、「ちょっとブリっ娘っぽいが本当に可愛くて困る娘」をすることができた。
ずっと、こうしたかったのだ。これが私の本来の姿なのだ。下界にて「ちょっとオカマっぽい」と言われることはあっても、逆にここでちょっと男っぽいことは、一度も無かった。
そしてこれから我々は、エッチなことをするのだ。
 
 
背後でカーテンを閉める音の主であったはずのナイトくん。私がスツールに着くなり、いつの間にか距離を詰めては、私を軽く絞め、壁に押しつける。そのまま私の身体を勢いよく触る。
部屋に入ってから吐息を我慢しなくなった彼が、ついに我慢できなくなったらしい。
 
 
!!!そんなに…我慢してたんですか…っ💗』
 
「おおおンン…!!!!!!こんなに誘われたら…誰だってこうなっちゃうよォンン…!!!!!!!」
 
 
薄暗闇の中、ダースベイダーのような呼吸音をとどろかせながら、ナイトくんはギアの上がった手つきで私の両手を片手で握って頭上で組ませ、壁にプレスをしてくる。私はそのまま動けなくなり、スカート越しに私の会陰をむずむずと擦り上げられたり、膨れ上がった股間を尻にずりずりと擦り付けられる。岩尾より小さい。
髪をかき上げられ、首筋や耳を舐められる。こいつは顔も声も体形も、何も魅力的ではないブサイクなデブなのに、予想通りの要望を言わずとも応えてくれる紳士としか形容しようが無かった。
好みではないのに体の相性が良い男のようで正直興奮する。
 
 
私は何度も背後から責め立てられ、時折仕返しと言わんばかりに後ろ手に彼の股間を擦ってやるが、やがて振り向かされてなすがままにされる。呼吸をしながら喘ぐので精いっぱいであった。
ゆっくりとブラジャーをずり上げられ、暗闇の中で小さく勃起した私のそれを確認される。ナイトくんは慣れてきた目で私の顔を見て、なにやら言葉責めをしながらそれを指で位置を確認した後、おもむろに舌で貪り始める。
 
流石に乳首を舐められた経験は無かったのだが、元々ピアスを開けたい一心で乳首攻め用の吸盤を愛用するほど乳首にはうるさい私である。とても感度がよろしいようで、私の身体は勝手に跳ねる。
相手は私の腰を支えるので精いっぱいのため、私は服のボタンを解かれて大好きなコハルちゃんのように肩まではだけ、乳首から下も全て露になった状態でブラウスとカーディガンの裾をたくし上げるかたちのまま、身体を委ねた。
 
 
ときに女の子のような声を出す練習には、喘ぎ声を練習してそこから普通の発声に直してゆくのが良いとどこかで聞いたことがある。
一人でオナニーをしている時はこのようなことなどなかなか難しいのだが、乳首を舐められるまで「オカマ声で善がる男」でしか無かった私の声がこのあたりから裏声になってきたのを覚えている。
女の子のような声を出す練習には、乳首を舐めてもらうのが有効である。皆さんもどうですか。それより僕と踊りませんか?
 
 
ナイトくんはひとしきりに私の乳首をねぶったのち、私のパンティがなにやら濡れているのを手で確認し、うめき声を上げた。
そうしながら「わぁっ…エッチな汁…!こんなに溜めてちゃダメだよ…!!」とか、「誘惑してきたくせに責められると善がっちゃうなんて…本当にエッチな娘だね…!!!」とかなんとか。まさに竿役の台詞をいくつも吐いた。こいつキメーな~…いいんだよそういうのは…
 
 
ポジションを入れ替え、私は相手に抱きつきながら乳首を擦るので精一杯。相手は私のパンティを食いこませて持ち上げたりした。
やがてクロッチのあたりをゆっくりとずらされ、私のおちんちんがパンティの拘束を解かれ、しなった勢いでスカートの裾を持ち上げる。私は猫のような声を上げたつもりだ。
勃起したおちんちんでスカートを持ち上げるのは、男の娘にしかできない。皆さんもどうですか。それより僕と踊りませんか?
 
 
服が乱れに乱れたままスツールに座らされ、スカート越しに亀頭を擦られ、そのままスカートの裾で何度も竿を隠しては持ち上げ、ブルン、ブルンと露出させ、弄ばれる。私はあん、あんと小刻みに鳴く。AVでおっぱい相手にセーターやキャミソールでこれをやる男優って信用できるよな。
 
私ははじめ脚を閉じて真っすぐに座り、股の間から真上にバベルの塔をおったてていたのだが、どうやらナイトくんはその程度では収まらぬようで、ソレが始まった。
 
「こんなエッチなことしてるんだから…そんな行儀のいい格好してちゃダメでしょ…!!!!真面目なふりして、本当は淫乱で…いけない娘なんだから!!!!」
 
突然富野作品のような言い回しをしたナイトくんは私の脚を持ち上げ、M字に開いた。誰かが入ってきてしまったら最後、これを見せつけることになる。
私は普段からこのような恰好でオナニーに励むことは無いので、強制的に脚を広げられるのはきわめて恥を刺激された。
その後もお互いの姿勢を何度も変えたが、癖で気持ち良くなってしまうとつい内股になってしまうたび「ホラ!!!ダメだよぉ…ッ!!!!」とM字に直された。これが彼とのプレイで一番気持ち良かった。
 
 
「あんなに誘惑しながらこんなにペ二クリにいやらしいもの溜めてたんだねぇ…!!!」と言われた時、身体だけは感じつつも、脳裏だけは圧倒的に冷静になってしまった。
 
 
 
──────────────ペ二クリって何…?
 
 
 
帰った後調べた。
 
 
 
やがてフェラ島チオ太が始まった。温い口内が私に絡みつき、不快なのに逃げられない感覚が新鮮であった。思い出すだけで痙攣してしまう。
本人曰くテク無しらしいが、口から黄色い声が漏れずにはいかず、私はすぐにへとへとになった。
 
 
このあたりから私の悲鳴を聴きつけた男たちが集まって来てしまった。
 
 
カーテンを開かれ、私がM字開脚になりブラジャーをずらされ、紐パンの片紐をほどかれ、上も下も開けて下半身をじゅぽじゅぽと鳴らされて善がる私を数人に見られた。「見ちゃダメぇぇ」と情けない声で鳴いてしまった。お兄様もお姉様も「かわいい子ね~」と流して去った。彼らにはこれが日常なのだ。ちなみにこのせいで帰るまで「シアタールームでイカされてたコだよね?僕ともやろうよ!」とナンパをされた。
 
 
オカマと純男、純男同士のカップル達は、我々も続けと言わんばかりに、客席の一番後ろを占領して盛り合う。
ニューハーフなのか、喘ぎ声が完全に女性のようなお姉様の矯正が聴こえたこともある。リズムを聴くにガン掘られていた。後に知ったが硬派オジサマの手によるものらしい。
 
壁になっているパンチングの隙間から彼らの踊り狂う僅かな影と矯正を隣に感じながら、我々もスケベに励んだことが酷く鮮明に脳裏に焼き付いている。
 
 
「ほらァ…責められてるの、みんなが見て…他の人達も始めちゃったよ…!」とブサイクな言葉攻めを繰り返され、不意に妙な言葉を投げかけられる。
 
 
「見てェ…見てよ…アレ…ヘェ……あの鏡…!真面目そうな制服姿だった女の子がさぁ…!今はこんなエッチな姿で善がってて…ほんとにかわいいよ…」
 
 
だがそこに映っていたのは女の子ではなかった。
上映席の後ろにある姿見の中ではひたすらに、だぼだぼの癒し系JKを装った限界おじさんと自分の背後で眼光を紫色に輝かせる黒服でブサイクな巨漢が蠢いていた。
 
 
 
最後は接吻である。
 
 
───フェラした後の口とキスするのか…
ブサデブとキスをするより、自分にフェラをすると考えた方がマシだった。
 
 
シングルベッドほどあるソファかスツールかよくわからない場所に押し倒され、馬乗りにされ、手を組まれる。ナイトくんは巨漢であったが、幸い私の体格が貧相なので二人で収まる形になった。
自分の2倍もある体重に押さえつけられ、全く身動きが取れない私の口にナイトくんの舌が入ってきた。
 
 
 
 
 
 
「ん…んん…!!!オゴ!!!!ゲホ…!!!」
 
 
 
 
 
 
初めてのキスは【中島涼太】のflaverがした。
 
 
 
 
 
 
オタクの口臭と、コーヒーと、不健康な内蔵の生レバーの味が襲う。
「ごめんなさい…こんな…キス…ダメみたいです…ごめんなさい」
 
 
 
30秒ほどホンモノの嗚咽を相手に聞かせることになり、我々はすっかり冷めてしまった。
 
 
 
それでも私はまた上も下も舐られ、最後は胡坐をかく相手の上にM字開脚のまま座らされ、手コキで絶頂をお披露目するポーズに至った。
なお最後まで相手の手では絶頂出来なかったので手を添えて貰い、己の手で果てた。
当然のようにデスクにはゴミ箱もウェットティッシュも完備されていたので、その場で後処理をした。
 
オナニーではなかったはずの体験は突然に終わり、再びボックスはオナニーへと収束してしまった。
 
 
 
「先輩、先輩は気持ち良くならなくていいんですか…?おちんちん、挿れてもいいんですよ…」
 
 
 
それでも強靭なまでに女の子のようなマインドを忘れない私は、賢者タイムなるものも打ち破り、彼の陰茎をねだってみた。実際、女装オナニーをするようになってから突然我に返り冷めるといった症状も無くなり、少し射精量が減るだけであったので、気にしない。
ゴムも自分が持っていたので、この男になら尻を委ねるにやぶさかでないと思ったが、ナイトくんは最終的に私とのセックスを断った。
『最後におちんちん触らせてくださいよ♪恥ずかしいところいっぱい見たのに、ズルいです…』とかわい子ぶってねだると、パンツを降ろして見せてくれた。
それはギンギンに硬くなっているのに、もう書けない鉛筆のような太さと長さの粗チンであった。
『あっ…💗かわいいっ💗』さわさわと撫でてやると、それは犬がしっぽを振るように返事をした。
 
 
 
 
ナイトくんとピロートークをいくつか交わし、別れ際に詫びのキスをしたが、それも【中島涼太】としか言いようがなかった。
 
私が一人になってしまうと危険な目に遭ってしまうのを気遣ってか、彼はそこに残り、先に私の方からその場を離れた。最後に振り向くと、それは道半ばで果てた戦士のようだった。
 
 
 
 
 
 
ところで、我々がスケベに耽っているなか、行為の一部始終を怪しい人影がカーテンから半身を見せて佇み眺めていたのを覚えている。
片手でのれんをくぐるようなポーズのまま、みすぼらしいスウェットとジャージ姿で、ズボンとパンツを少し降ろして【中島涼太】を露出させ、上下に扱っているところを我々に数分見せつけ、そのままで居た。まるで「次俺だよな?」と言わんばかりであった。よく見ると岩尾だった。

あまりにもその姿がダサかった。交渉のトークもしない男のオールを握るつもりは毛頭ない。
とにかくコンタクトを全力で避けるべく、目の前の黒服の粗チンデブとピロートークに励み、仲睦まじそうな光景を見せつけることで追い払ったわけだが、その後トイレの個室に入っていると廊下の方からズンズンと重い音が近づき、私の個室のドアノブを掴んでガツガツと強烈にしつこく揺らし、やがて舌打ちをして去って行った。ウケたい者がわざと鍵を開けて歓迎しているケースもあるのだろうが、残念そうに。
 
 
 
 
 
 
以上。その後は自室で自撮りをしてTwitterで実況してみたり、カビと埃だらけのシャワーブースにビビり、備え付けのボディソープのボトルに精液を吐いている奴が居ないか警戒し、お湯を浴びて着替えてもなお出待ちをするオジサマに口説かれたりしてから店を出て帰路についた。最寄り駅に着き、寒空の中コインランドリーへ寄り、密かに下着やスカートたちを洗った。
この記事は轟音とともに回転するかわいらしい我がパンティとブラジャーを眺めてコーヒーを啜りながら書き始めたものだ。
 
決して広くはない中に儚い命のやりとりを詰め込んだヴァイオレット・ボックス。今度は夏ごろにでも異なる装いで行きたいのも山々だが、岩尾に出くわさないか心配である。次はカマレズがいいな。
 
 

 
 

もし行くつもりなら

この記事を読んで現れるかは定かではないが、念のため。
一日滞在して常連らしきお姉様方から性欲ジジイ、ヤリモク通り魔無敵男まで、数々の属性の持ち主に会った。
女装をしたいか、している人に興味があるなら、行けばよい。純男はオカマ目当ての可能性が圧倒的に高く、純男として滞在中に純男に絡まれることは無いと思うので安心して欲しい。私は可愛すぎるのと、スケベ始終を他の客に見られたので変身解除後も「次はおじさんともしようよ~~w」「じゃあ次いつ来るの~?」と絡まれたが。
 
金銭に余裕があれば店内でアイテムをすべて揃えることも出来る点もお勧めポイントだ。私のように田舎までリサイクルショップを網羅的に駆けずり回ってスカートを購入する等の涙ぐましい努力から解放される。
 
 
1.興味があるならできるだけ若いうちに
これに尽きる。私がこのヴァイオレット・ボックスでチヤホヤしていただけたのは、若いからというだけの可能性が高い。平均年齢が40程度なので化ければ相当ブサイクでもなければ構ってもらえるはずだ。
 
2.一人で行動しない
ウロウロしている寂しそうな奴は余裕のなさがすぐにわかるし、プレイルームに入ればしつこいナンパに遭う可能性もある。
一人にならないコツは、一人の奴を捕まえることか。ナンパしたい奴にはキープでも良いのですればよい。どうせ相手も割り切っている。
純男の場合は相当イケメンでもない限り、一人で待っていても構ってもらえないだろう。そういった点はおそらく本場のノンケハプバーと同じなのではなかろうか。オカマと友達になりに行くくらいがまるいと思う。
 
3.グループで行動する奴に構わない
竿役のギャル男めいた客層の報告が確認されている。逃げ場を塞いだり、バー内で過激なタッチを要求するなどの記事を見たこともあるが、群れなければ何もできないのでそうしている。恨まれないように避けよう。
遭うのが怖いのであれば、自分も最初から友人と行くのもいいかもしれない。もしくはカウンターで飲めばよい。相手の話をつまらなそうに流していると、それを聞いているバーテンが助け舟を出してくれるかもしれない。
 
 
以上。健闘を祈る。
レポート待ってます💗
 

 
 

おわりに

実は今回のボックスに至るまで、私は心底イラついていた。
最近知り合いが結婚したり、彼女ができたり、親戚の子供が増えたりと、人の進歩を見せつけられていたからだ。
結婚したい訳ではない。彼女など欲しくもない。ましてや子供など勘弁である。
私は彼らの幸福ぶりを横目に、もはや自分で自分をあやすことに限界を感じていた。あやされたかった。
 
だから、これはまぎれもなく、社会的な自傷行為であり、この記事はシャカフテポルノだ。
 
 
 
 
 
そういえば今月で29歳になりました。誕生日にこれを投稿する予定です。
12歳の頃、29歳までに誰かからは確かな評価を貰って、彼らからだけは忘れられない存在になって、短命で死ぬかもしれないとなんとなく考えてから今までずっと、29歳で後悔なく死んでもいいように生きようと決めてきました。そのためにやりたかったことの一つがよもや女装カマレズセックスとは…
 
悔いが無い訳ではありませんし、死にたい訳でもありません。別名義で連載しているコンテンツがあと数年分かかり、そのせいで30歳までにやりたかったこともできなかったので、まだまだ最低でも5年程度は創作マンでいるつもりです。
 
このブログは、それら活動のすべてが行き詰った時のためにある最後の砦です。精神疾患と戦いながら、最悪な気持ちを少しでも笑い飛ばすために自分の僅かに残された笑いどころを切り分けて与えるように書いています。俺の歌を聴いてくれて、ありがとうございました。
僕は本当に今年で死んでしまうかもしれません。いつ自発的に死にたくなるかわからない恐怖心と戦いながら、残りの人生を歌います。最後までよろしくお願いします。
 
──俺はまだまだ喋り足りないからな。
 
宣伝です。「郡山に風俗代を渡してお店のレポートをしてもらうゲーム」参加者募集中です。
僕の収支が黒字になるのであれば安くても大丈夫です。
 
アブノーマルなコンセプトのお店の場合は要相談。DMで受け付けております。原則FF内のみ。
 
 
 
─じゃあな。