【R-18G】トワイライト・ボックス

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追記:2019/03/28
R-18G表記のある風俗レポ系統の記事もリンクフリーとしました。
誰かレビュー書いてもいいんだよ。書けや。


トワイライト・ボックス



※本記事は所謂風俗レポート的な文脈のものではあるが、読者諸君が基本的に期待、想像しているであろう比較的健全な性的嗜好とは異なる。
端的に申し上げて、特に絶世の美男子でもなければ爽やかな汗をかく筋肉もない貧相なモヤシ男が暗闇でパンツの中を探る、念入りに処理されたまさに不毛極まりない営みを記したものであることを先に説明させて欲しい。
遊び半分で読むのも構いはしまいが、数日後に全身の肌がチクチクしてきてかなわぬと泣いても当方は責任を負いかねる。はて他人ごときに感受などせぬという輩にこそ、なるほどこれが弱者の末路のひとつかと消費してもらいたい。それだけで十分だ。






白昼人の行き交う繁華街の通りに隠れもせずそのビルはあった。



「テレクラ」「VR」「個室 DVD」
「ビデオ鑑賞 見放題120分1080円」「ナイトコース シャワー 軽食」



イエローの背景にレッドのシンプル過ぎる極太ゴシック体たちがめまぐるしく窓に貼り付けられており、店内が見えない。雑居ビルの一階入り口には階段と「4F 個室ビデオ店なんたら」とステッカーの張られたエレベーターが確かにあり、表にどのコースでいくらだのといった看板もあった。言われてみれば白々しいこの佇まいは、確かに駅前でよくお目にかかる店の看板だと思い出したが、私はこの個室ビデオなる店が、よもや快適な射精環境を求むる男の聖地だとは、ミソシタのポエムコアを聴くまで存じ上げなかった。



ここへやってきたのも先日、奇しくも臨時収入があったのだ。それは控除された医療費だった。これまで精神科につぎ込まれたかつてのお年玉が自立支援医療の手続きのお陰でおよそ半額以上も返ってきたため、私は錬金術師にでもなったかのような気分になり、しかしそれをどんな目的に使おうかと決めるまでに時間は必要としなかった。夢があったからである。







個室ビデオで渾身のオナニー。



この予算でとびきりスケベな自意識をあのボックスに発散するのだ。男になるには酒も女も必要ない。全ては射精へ回帰する過程。その神格化された布石でしかないのだ。俺はオナニーでいく。






エレベーターが開き店に入ると、そこは基本的に桃色ビデオ屋と大差の無い姿があった。
ところ狭しと高い棚が並び作る通路。ビデオを漁る先輩同士達に黙礼で敬意を表しつつ、それに続いた。この先にスケベへのトータルリコールが待っているのだ。



私は基本的にAVを見て抜くといった真似をしない。Twitterを見てもらえれば理解って頂けるように、パンティが見えている二次元の絵に欲情している。
とはいえこのスケベの里においては、7本まで借り放題。万が一見るときのことを考え、苦手な本番行為描写の薄いであろう、隠し撮りのような企画系のビデオを適当にバサバサとケースから抜いてカゴに入れた。アニメでも悪くなかったが、ご存知の通りエロアニメというものはすべからく抜けない。
私はこと三次元において、セックスではなく女性のファッションと下着くらいでしか抜けないのだ。お言葉ながら、セックスはグロテスクだ。誰もが好きだというのは可笑しい。



カゴを手にカウンターへ行くも、ラーメン一蘭よろしく顔の高さまで天井から伸びた棚のおかげで店員の顔が見えず、目を合わせることなくチェックイン(?)が可能な画期的過ぎるデザインに呆気を取られつつ、どんな個室に致しますかと問われ手続きをする。どうやらニーズに合わせてマットだけが敷かれた部屋、ソファやベッドのある部屋、ロフトの部屋などを用意されており、誰もが自らのスタイルに合わせて多種多様な工房を精製できるのだという。私は早くもオナニーという身近な悩み事が千差万別であることにご理解がある彼らの配慮に感涙を禁じ得なかった。



私は断固騎乗位でアヌスをほじくりたい所存であったため、リクライニングソファーのある禁煙の部屋を手配してもらった。



カウンターの横にはバーカウンターの酒よろしくオナホールやローション類と、貸し出されているらしき桃色猥褻本がディスプレイされ、男女問わず替えの下着類(女性は入店出来ぬ筈である)、ワイシャツ、アメニティグッズどころかインスタントの軽食や酒まで置かれたスゴイカオス・コンビニエントバイテンが展開され、それを横目に個室への廊下を抜け、部屋の鍵に記された部屋番号を目指して廊下を歩いた。



間接照明にうっすらと照らされた狭い廊下だけを見れば殆どカラオケボックスと見紛うものであったが、個室の並ぶエリアに足を踏み入れた瞬間に鼻腔と聴覚を襲ったのは誰もが隠せぬうっすらとした瘴気。それだけは嘘をつかなかった。廊下に軽食の自販機があったが、ここで食事を摂る者の気が知れぬ。



これが闇と呼ばれるものであろうか。
持てあましたリビドー、抑え込んだエゴの終着駅。
汚い男汁を乗せた爛れ袋が行き交うソドムの市がそこにあった。
ビルの何階であれそこは地下二階。
ドアの向こうでは、きっと誰かが命のやり取り。
光に惑わされてはならない。この中を走るだけ。






個室に到着するなり早々に服を脱いで全裸になり、ビデオのカゴにコンドームと共に入れて貰ったものとは別に、持ってきたウェットティッシュで身体を拭いた。そうしてAmazonコンビニ受け取りとドンキホーテと、100均と古着屋を醜く駆使して集めたものを取り出した。



初心者向けのアナルプラグ、女ものの安いブラウス、エクステンションのウィッグ、大きめのニーハイソックス、プリーツスカート、ワゴンに投げられていた割には非常に可愛らしい薄桃色のブラジャーとショーツのセット──────



闇の中、私は再臨する。



私はこの計画を実行するまで1ヶ月に渡りあらゆる手と自転車を酷使し、この炎天下を駆けずり回って究極のオナニーを実現すべくこれらを調達していたのだ。



これでも合計3000円ほどである。検証を重ね運を高め、波を読み、子供のお小遣いで新たな自分を錬成した。医療費はまだ半分以上もある。余裕だ。



ほどなくして、我が触覚を刺激するのは新鮮極まりないものばかりであった。




締め付けては脇と肩をまさぐり、恥ずかしさを忘れさせてはくれないブラジャー。
ブリーフの懐かしい感覚かと思えば、どこか落ち着かないか弱さを秘めたショーツ
太ももまで覆いつくしては細く艶のある生足を際立たせるニーハイソックス。
それを完全には守ることが出来ない不完全な衣服であるスカート。ブラジャーを既に薄く透けさせたブラウス。



何をとってもスケベであった。どうしようもないか弱さに恥ずかしさを覚え、女子学生はこれを当たり前に着こなし生活を送っているのか、彼女らの強さと気品は一体どこから来るのだと疑問符が浮かび、スケベな気分で頭が一杯になった。



心拍数の高い人間のオスほど欲望に実直で行動力のある生き物はない。大変危険な状態である。着飾ったとて、私はオスのフェロモンを脇から垂れ流すくらいに終始ムラムラしていたに違いない。



俺セレクションの制服風ファッションは終始スケベ心をくすぐって仕方がなかった。
私はその危なっかしい格好で廊下に出て、トイレを目指した。実に開放的な気分であった。こう生きてみたかったのだ。誰が私を咎めることが出来ようか。






入念に個室ビデオについて調べていた頃、見かけては特に胸を膨らませたことといえば、女装をして店内を歩いても性的に鑑みて情状酌量の余地があり、別段怪しくないという点であった。実際にこのボックスにおいて女装を趣味にした男達のコミュニティもあるようで、彼らのようになるのもいいと思っていた。或いは精神疾患で自暴自棄になっていたのかもしれない。それでもよかった。



個室の壁にオナホールとローションとパンティの自販機が備え付けられたちゃんちゃらおかしなトイレのウォシュレットで鍵を開けたまま腸内を洗浄していると、女の子が友達の家でビデを浴びながらオナニーをしているようなスケベシーンを連想して甚だスケベな気分になり、私は女の子のような声を出した。ブラジャーが透けるほどの汗をかくために着た夏用のパーカーで萌え袖をつくり、口を押さえた。ブラジャーはとうに透けていた。



僕は可愛い女の子。僕は可愛い女の子。
お尻を責められるのが好き。エッチなことを人に内緒でするのが大好き。
そう脳内で唱えると、海の向こうで己のカルマに陽が差し、大きくたわんでゆく光景を見た。尻から水がぴゅ、ぴゅーっと流れ、私は汗だくになっていた。ドライオーガズムのようなものであった。鍵を開けていたが誰も入っては来なかった。



尻と手を入念に洗いその場を後にした。
四角形になった廊下を一周してみると、途中に猥褻本の並んだ本棚を見つけたのでしばらく読むことにした。誰か来ないかなといきり立ちそうなおちんちんを必死に意識せぬよう待っていると、真後ろの個室が開き、人が現れた。



それはガリガリのメガネオタクであった。生き写しかと思った。
彼はドアを避けて道を譲った私の太ももと第三ボタンまで開いてブラジャーが見えそうな胸を二度見し、まるで音読のように「はえ~」と発した。単なる鳴き声かもしれなかったが、私はそれが甚だ嬉しかった。彼が通りたかったのは私が退いた方だそうで、狭い通路で私のショーツとスカートに護られた尻と彼のペニスがランデブーを果たした。その続きは無かった。私は痴漢に遭いたかったのだ。



結局他の誰とも会うことはなく、個室に戻ってアナニーをすることにした。



初心者向けのアナルプラグは非常に小さいため、割とすぐ尻に挿入することが出来る。個人差はあれど、ゆっくりと尻の周りをローションまみれにして慣らし、奥まで挿入して前立腺を刺激すればよかろう。



練習が必要だの汚いだのと有名だが、尻の力を抜きなるべく強いウォシュレットで直腸をしっかり掃除すること、それを覚えておけば損はない。むしろ腸内洗浄を怠るとドライオーガズムの後、尻に突っ込んだ大人の玩具に便、ならびに糞、及びウンコがついてきてしまいまるでこの世ならざる冒涜的な罪悪感に数日ほど苛まれることとなる(一敗)。
念のため、玩具にもコンドームを装着するなどし、快適なアナニーライフを送るムーヴが必要である。以上参考までに。



そうこうしている間に探査ロケットは我がブラックホールを目掛けて発射された。乱雲を飛び抜け、ブースターの切り離しが行われる。私はその刻を片足パンツなる究極のムーヴを取り、リクライニングソファーに抱きつきながら待った。まるでカップルが抱き合いながら行う挿入だと己に言い聞かせた。



「お兄ちゃん」私は出来うる限り艶やかな声でソファーに言った。お兄ちゃんは何も言わなかったが、直ぐに私のを限界にさせた。尻にはお兄ちゃんのおちんちん。お兄ちゃんに向けられたのは我がおちんちん。頭がパンクしそうになった。部屋に窓は無かったが、この暗闇の向こうでおちんちんが蠢いているのを夢想し、果てた。コンドームつきの架空のおちんちんに尻を攻められながら、自分のおちんちんからコンドームに向かって断固射精した。地球の向かいで、夜空はターニングポイントを迎えた。彼らは虚空に放たれ、新たな世界が生まれた。



やはり、大勢で糞まみれになると最高やで。変態糞親父はかつてそう言った。私は糞遊びに興じる糞親父の気持ちは理解できまいが、そういう人が居てもいいと思った。それともうひとつ、ソファーガタガタ鳴らしてごめんなさい、こんなオナニーしか出来なくてごめんなさい。そう思った。



アヌスからプラグを抜き、カウンターで貰ったウェットティッシュの袋にそれをひとまずぶちこみ、ゴミ袋にコンドーム等のゴミを集めたりして少しずつ部屋の掃除をした。ソファーには捨てるつもりのタオルを敷いていたため特にしなければならなかった程ではないが、私の大嫌いな液体第6位であるコンドームの袋についたオイルめいた気持ち悪いものは安い革張りのソファーに所々ついており非常に申し訳ない気持ちになった。ウェットティッシュを二枚抜き取り、ソファーを念入りに側面まで拭いた。お兄ちゃんの面影はもうそこには無く、どちらかというとデイサービスに身体を洗ってもらうおじいちゃんのようだと感じた。



なんといっても、乳首である。
射精の後に乳首虐待グッズを外すのは、非常に胸が痛む。
自作した渾身の乳首虐待ネックレスを首にかけていたのだが、1時間半ぶりにそれを取り外すとき、私は怒りのビデオボックスで体内の銃弾を除くべくナイフを自らの腕に突き立て苦しむランボーと化していた。



乳首と尻と果てたペニスを拭いて力尽きた私は、本来土足で踏む床に下着姿で女の子座りをした。とても悲しいと思った。
ブラウスを肩に羽織り、より可愛い女の子を演出してみたが、二回戦に入る余裕は無かった。泣きそうになった。



妹の結婚式を祝い出発を渋るメロスのように、私は酷くのそのそと後片付けをしていると残りの30分は驚くほど早く過ぎた。DVDは一番マシであろう幼なじみの緩い服の隙間から乳首をチラチラと眺める内容のビデオを流していたが、祖父とのセックスに突入しそうになっており、リモコンを投げつける勢いで取り出しボタンの赤外線を放った。



先払いのため流れるようにカウンターでの手続きは終わりそのまま店を後にすると、雨が降りそうになっていた。



二時間と1000円があったら、人は何が出来ようか。
レディであれば映画が見られるかもしれない。俺は今日レディになれたのだろうか?何も決着のつかない問いに、空は雷鳴を怒鳴りつけた。ちっとも納得がいかなかった。



帰宅してから、携帯で録音した自分の喘ぎ声を聴いてみたが、呪怨のようであった。
世の中何もかも間違っている。



この話とて真実ではない。